海馬

人は危機的な状況に遭遇すると生物的生態反応を起こします。

排卵、免疫系、成長等のとりあえず必要では無い機能を減退させて、そのエネルギーを筋肉に振り替え大量のコルチゾールを放出するのです。

このコルチゾールはアドレナリンと同様、身体の瞬発力を高め、血圧を上げ、脂肪や肝臓に貯えられたエネルギーの燃焼を促進します。

コルチゾールが過剰に分泌されるとクッシング症候群になりますが、ストレスに晒された人も同様の症状が起こります。

このクッシング症候群の特徴の一つに記憶障害を伴う事が知られています。

ストレスに晒されている人の脳内でもコルチゾールや他のステロイドホルモン等が大量に分泌されています。

その影響を最も強く受けるのが海馬です。

海馬は脳の奥に左右一対あり短期記憶の中心的な役割や学習等に関与していますが、そこが萎縮している例が多く報告されています。

萎縮は細胞自体が減ったのか、樹状突起の萎縮によるものか諸説がありますが、PTSD(心的外傷後ストレス精神障害)やAC(アダルト・チルドレン=幼児期の被虐待)の人は、同年齢の人に比べ短期記憶が40%も低いという報告もあります。

海馬だけがコルチソールの影響を受けて萎縮してしまうのは、PTSDやACの人は、短期記憶が過去の忌まわしい記憶に結び付き易く、それが精神的な苦しみや悩みを増幅してしまうからでしょう。

記憶の機能を落とす事で消極的な生体防衛反応を起こしていると言えるかもしれません。

事実、ラットの実験でストレスを遮断する薬を与えた所、退化した海馬の樹状突起が甦った報告もあります。