糖尿病と神経障害

糖尿病の三大合併症の一つが末梢神経障害ですが、一番早くから高い頻度で起こります。なかでも、足の痺れ、冷感など知覚神経障害は頻度が高い事で知られています。

末梢神経には知覚や運動を担う体性神経と内臓器官を調節する自律神経があります。末梢神経が他の細胞と違うのは、エネルギー源として糖を直接細胞内に取り込む事です。

この時インスリンは全く関与しないで、血液の糖の濃度勾配によって糖を取り込みます。

ですから高血糖状態が長く続くと、細胞内で過剰な糖を休む事なく処理する事になり、末梢神経をカバーしている髄鞘が所々失われて神経の伝達が妨げられたり、神経内の細小血管が詰まったりして血統が途絶えて神経障害が起こる事になるのです。

知覚神経が障害された場合、下肢の痺れ・ほてり・ピリピリ感・冷感・神経痛という症状が出ますが、手や足の左右対称に現れ、夜間に悪化するのが特徴です。

この様な神経障害は糖尿病を放置すると5~6年で発生してしまいます。また交感神経と副交感神経にも次第に異常が起こってきます。

無自覚性低血糖、起立性低血圧、心臓調律異常、血管運動機能異常、呼吸機能異常、発汗異常や瞳孔と涙腺の症状等出てきます。

また消化器系では食道無力症、胃・十二指腸無力症、胆のう無力症、下痢、便秘等が起こります。泌尿器系では無力性膀胱やインポテンツがあります。

運動神経が障害されると眼筋麻痺・こむらがえり・腱反射の低下や消失等が起こり、足のつま先が上がらずにちょっとした段差でつまずいたりします。

知覚神経が鈍感になると冷たいとか熟いという感覚が鈍って知らない内に火傷をする、小さな傷やケガに気付かないで細菌感染を起こすといった事もあります。

なかでも危険なのが、自律神経障害を合併した糖尿病による突然死です。心拍数の減少や異常、頚動脈化学受容体の神経支配の障害や起立性低血圧等で致命的な不整脈を誘発する事で突然死が起きてしまいます。

また糖尿病の進行で恐いのが、交感神経系の反応が鈍くなる為低血糖を自覚できない無自覚性低血糖症です。

この様な患者さんのインスリン投与は非常にコントロールが難しくなり、頻繁に血糖測定を行わないと意識障害を引き起こしてしまいます。

この様に糖尿病は血管ボロボロ病であると同時に、神経ボロボロ病であるのです。血糖値が高くて既に足の痺れ等を自覚している患者さんには、自律神経系の障害の恐さを喚起する必要があるのです。