臭いと遺伝子

嗅覚は感覚器の中で最も原始的です。

鼻には通常の臭いを感じる嗅覚と性的シグナルを感知するヤコブソン器官があります。

ところで、我々の身体から出てくる臭気といえば汗ですが、汗には水分や塩分の他に多数のアミノ酸が混ざっています。

また皮脂腺からは温厚で透明な脂肪質の分泌物が出ていますが、そこには遊離した脂肪酸が豊富に含まれています。

この皮脂腺は思春期まではまったく活動しない事から、この分泌物には性的なシグナルを放出する物が含まれていると考えられています。

特に腋、頭皮、陰部、臍に密集しているアポクリン腺はそれ自体には臭いが無いのですが、バクテリアが脂肪分とホルモンを分解して強烈な臭いを出します。

ところでマウスの実験結果で次のような結論が出ています。

雌のマウスは、他の条件が全て同じなら、自分と大きく違うMHC(主要組織適合性抗原遺伝子複合体)という遺伝子群の雄を選択するそうです。

その際、この遺伝子群の違いを雄の尿の臭いで嗅ぎ分けるといいます。

この第6染色体上のMHCといわれる遺伝子群は免疫系の中での自己・非自己を明確に区別していて、病原体の侵入に対応する役割があります。

また病気への耐性に関わる多くの遺伝子が含まれています。

ですから対立する遺伝子を獲得する事は有効な自己保存の選択といえるのです。

人の場合としては、男女に二日の間防臭剤や香水を禁じてTシャツを着てもらい、男女の被験者のそれぞれの異性の好きな臭いの順番を付けるという実験がありました。

この結果もやはりMHC遺伝子が大きく違う臭いを選択したのです。