日本人の糖尿病

2型糖尿病の発症は民族差や地域差が大きく、アメリカのアリゾナに住むピマ・インディアンは成人の半数が糖尿病です。

その原因のひとつが遺伝子の一箇所に変異が起こるSNPs(―塩基多型)で、β3アドレナリン受容体遺伝子にー塩基多型が起こっている事が分かっています。

β3アドレナリン受容体は熱産生、脂肪分解に関係していて、そこが変異していると基礎代謝や脂肪の分解能が低下し、腹部肥満、高血糖、血圧上昇、インスリン抵抗性を引き起こすので糖尿病になりやすいというわけです。

しかし考えてみればこの変異はエネルギーの節約遺伝子ともいえるわけで、厳しい食料事情の中ではかえって生き延びるには有利な変異だったといえます。

さて、日本人は同様の変異を持っている人が多い事が分かっていて、その頻度はイヌイット、ピマ、インディアンについで世界3番目に高く、欧米人の2~5倍にもなります。

欧米人では高度の肥満体型をよく見ますが日本人ではまれです。にもかかわらず日本人に2型糖尿病が多いのはこの遺伝子の変異によるものという事がいえるのです。

この変異を持つ人はそうでない人に比べて糖尿病の発症が約6年位早く、減量がしにくく、インスリン抵抗性や血糖のコントロールが改善しにくいのです。

さらに網膜症や腎症にもなりやすいようです。2型糖尿病の患者さんが全てこのパターンではありませんが、厳しく日常生活を律しても体重や血糖値をなかなかコントロールできない人はこの変異を持っている可能性が高いといえます。

また家族の中に糖尿病発症者がいる人はこの遺伝形質を持っているものと考え、一層の注意が必要です。最もメキシコで伝統的な食事と労働をしているピマ、インディアンはアリゾナのピマ・インディアンに比べて平均で26kgも体重が少なく糖尿病も少ないのですから、食生活や環境でコントロールできるという基本は日本人でも同様です。