脳の消化管ホルモン

消化管に関係するホルモンの多くは脳や神経にも存在している事が分かって、それらを脳一腸管ペプチドあるいは脳一消化管ホルモンと呼ぶ様になりました。

その中でも働きがある程度分かってきたものにコレチストキニンというホルモンがあります。

このホルモンは少数のアミノ酸が繋がった構造を持っていて、小腸粘膜から分泌され胆嚢を収縮させたり、膵臓から膵液を分泌させたりする作用があります。

脳の中では食欲の調節に働いていると考えられていましたが、1988年、カナダの生理学者のレ・フェルドの実験で別の作用がある事が分かりました。

このコレチストキニンを被験者の静脈に注射したところ、すぐに「世界が没落する感じ」「不快感や不安感」が数分問起こる事が分かったのです。

翌年、別の研究者の報告では、10人中7人の被験者がパニック発作を起したのです。いずれも数分という限られた時間です。

被験者の感想として「説明のできない恐怖感」「自分の身体を制御できない」等を感じたそうです。

ヒポクラテスの体液論によると胆汁質は短気で怒りやすい、精力的だといわれています。

不安は怒りに転嫁しやすいものです。怒りの表裏として、脳内の不安や恐怖が隠れているといえるかもしれません。

陰陽五行でも肝・胆は怒りですが、脳一腸管ペプチドの存在は先人の直感の鋭さを感じます。

また、コレチストキニンは脳内の重要な神経伝達物質がある部位に見つかっています。

そして痛覚とも密接に関係している延髄の孤束や最後野とも関係していますので、コレチストキニンの脳内分泌が多い人は痛みに対して敏感になりやすいという研究もあります。

いずれにしてもこのコレチストキニンは不安を誘発する物質であり、また胆嚢を収縮させる物質という不思議なホルモンなのです。