細菌の自己防衛

細菌側から見れば抗生物質はやっかいな敵です。ペニシリン登場後の1950年には細菌感染による死亡数は半減して、その後更に減少して人間側の勝利と思われていました。

しかし、数年後には細菌も防御態勢を整えて抗生物質に耐性を持つ赤痢菌や大腸菌が登場したのです。

とくにペニシリンを分解する酵素、ペニシリナーゼを持つ黄色ブドウ球菌の登場は人間側には脅威でした。

1960年にはこの酵素に分解されないメチシリンという抗生物質を開発したのですが、1年後にはメチシリンに耐性を持つ黄色ブドウ球菌(MRSA)が出て来ました。

1980年代には多くの細菌に効く第3世代と呼ばれるセフエム系抗生物質が数多く使われる様になりました。

しかし、この抗生物質は黄色ブドウ球菌には効き目が弱かった為に、両方に耐性を持つMRSAが爆発的に増えて、院内感染の問題が次第に深刻になったのです。

高齢者や手術後の免疫力が落ちた状態では感染が致命的になりますが、今のところバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニン等の抗生物質が有効です。

しかしイタチゴッコで先を越されるのは時間の問題だと言われています。

また細菌側にはもう一つの防御法があります。

それは身体に侵入して、特定の場所に定着して増殖する時に細菌の表面から粘っこい物質を作りお互いにくっついて塊りになり、抗生物質の攻撃を避けようとします。

このバリアーをバイオフィルムと言いますが、このネバネバ物質により、体内でしぶとく生き延びて潜伏しているのです。

これに唯一対抗出来るのがエリスロマイシンという抗生物質なのですが、元々殺菌力は弱く、どうもバイオフィルムを作るのを妨害する働きがある様です。

いずれにしても、これからも人類と細菌の闘いはエンドレスに続く筈です。

鶴巻温泉治療院