嗅覚の一生

嗅覚は進化の面から見ると五感の中でも古い感覚です。発生の過程でも早い時期に作られ、妊娠5ヶ月頃になると匂いを感じる事が出来る様になります。

羊水の匂いが原始的な匂いの記憶になって母親への愛着など、その後の発達に役割を果たす事になるのです。子供の頃は匂いに対する好みは狭いのですが、性ホルモンが活発になる思春期になると匂いの好みが大きくに変化します。

それまで好きだったストロベリー等の匂いは好まれ無くなり、不快に感じられていたジャコウ等のフェロモン系の匂いを快く感じる様になるのです。

それも20歳以降では匂いの好みはあまり変化しません。匂いに対する感受性は30~40歳で最高に達し、50~60歳ではまだ匂いに対する感受性は健在です。

ところがそれ以降嗅覚は衰えて行き、80歳までの半数、80歳以上の4分の3は嗅覚がほとんど衰えてしまうと言います。この衰えは特定の匂いに対してでは無く、匂い全般が嗅げ無くなって行くのです。

原因は鼻腔障害や粘液層の乾燥、嗅細胞数や産生数の減少、脳の嗅皮質の退化等が考えられます。嗅覚は感情や気分、記憶と密接に結び付いているので、嗅覚の衰えは全身的な影響を与える事になります。

パーキンソンの初期には幻臭が起きたり、うつ病では自己臭感覚が強くなる事もあります。また痴呆症の前触れとして嗅覚が急激に低下する事があるので診断の一つの目安となります。

鶴巻温泉治療院