股関節痛みの要因

股関節の可動域は腰椎骨盤と連動していないと負荷がかかります。純粋な寛骨大腿骨可動性は70°そこからは軟部組織が潰れて93°そこから腰椎の後湾と骨盤の後傾が起こって125°まで曲がります。という事は正常な股関節の動きには腰椎の後湾と骨盤の後傾が動きの中で必要になります。93°までで痛みが起こるのであれば股関節そのものを見る必要があります。

深屈曲動作の生活習慣は反復継続して軟部組織に継続的に傷つける事になります。なので病歴や仕事の内容も重要なポイントとなります。股関節は屈曲角度だけではなく、股関節の軸に合致した回転運動であるなら深屈曲も負荷は減りますが、足を前に持って行った状態ならば軟部組織に多くの負担をかけます。どのような動作かというと足を外に開いた方が骨頭頸部軸上回転運動に近づくので屈曲はしやすくなるのです。

痛みの出る場所

痛みを拾う神経は大腿神経.閉鎖神経L2L3L4で前側の痛みに関係しています。5つの神経が関係していて残りの3つは後ろの痛みに関係しています。更に鼠経靭帯よりも上に腸骨鼠経神経更に上の部分であると腸骨下腹神経の2つがあり7つの神経になります。

大腿神経

大腿神経は大腿前面を下方に下りていますが筋枝があります。感覚枝伏在と関節包に枝葉を伸ばしている関節枝があります。筋枝には恥骨筋.腸腰筋.があります。

大腿神経が痛みを拾っていた場合大腿神経支配領域の筋のスパズムを起こし関節包の痛みを起こします。仮にL2L4のヘルニアがあると腰神経も関係があります。ダブルクラッシュ症候群:神経は2か所以上絞扼障害があると神経興奮が起こり異常感覚や痛みを出したりします。股関節前側を支配している神経は大腿神経ですので、ヘルニアの椎間孔拡張、腰椎アライメントのアプローチも必要となります。

paraneual sheath

筋膜は滑走性が無いと痛みが起こります。それぞれに筋膜がありますが、一番滑走量が多いのは左の図黄色の3つが神経で回りを包んでいるのが青色のparaneual sheathと呼ばれる部分です。筋内膜と筋周膜の間の層で一番滑るとされています。神経の神経神経上膜および神経周膜の神経Narvi Nervorumは神経の神経と呼ばれ枝葉をparaneual sheathまで伸ばしています。

神経の滑走が悪くて圧刺激が加われば「神経の神経」の興奮情報が発生してしまい、有髄神経や軸索に神経情報を伝えてしまって痛いと感知させます。

 

エコー
神経の機能障害

神経の伸長滑走障害が起これば、その興奮情報は求心性に働き中枢にも伝えるし遠心性の脊髄神経と交感神経に情報を伝えてしまって血管のスパズム筋膜スパズム骨膜の痛みとなります。スクレロトームと呼ばれ更に痛いと感じるのです。

神経自体の問題で筋スパズムになる事もあります。

生体画像

ではどういう筋肉がスパズムをおこすかというと、illiocapsularisイリョウキャプセラリスと呼ばれる腸骨下関節包筋です。cカプセル関節包AIIS上前腸骨棘LT小転子で全面を覆ってるのがic(illiocapsularis)と呼ばれる筋肉です。icの役割は股関節という大きな関節包の為関節包が内部に挟み込まれない役割を果たしているといわれています。

icの上一層には大腿直筋があり、内側には腸腰筋が位置します。外側には小殿筋があります。
隣の図FNは大腿神経で、横に神経線維が多くクモの巣状に滑走しているのが見えます。大腿神経が興奮してしまうと、icもスパズムを起こしてしまうのではないかと学説上いわれています。

そうなると関節包を外側に引き離せないのでインピンジメントされやすくなってしまいます。icが緊張を起こすと腸骨筋との滑走も悪くなり、icと大腿直筋間の滑りも悪くなり、大腿直筋と小殿筋間の滑りも悪くなってしまいます。

小殿筋を前額面上で見ると股関節の関節包の上方にも付着しています。icに問題が起こり、小殿筋との滑走が悪くなると関節包の上部の方に引き上げる事をします。小殿筋の引き上げに対してicが正常であれば、挟み込まれないようにしますが挟み込まれる事になります。

大腿直筋

icの一層上に大腿直筋がありますが、大腿直筋が股関節の痛みの原因となる事があります。筋腹的に大腿直筋の近位部は毛細血管の血流量が少ない特徴があります。運動神経は近位部と中央~遠位部に別れます。という事は血液供給が不足して酸欠が起こりやすく、近位部が回復しにくい痛みを起こしやすい部位でもありますので、大腿直筋が付着している下前腸骨棘は痛みを拾いやすくなります。

大腿直筋屈曲

股関節屈曲0°では直頭にけん引力がかかり、AIISに力がかかり、股関節屈曲90°では反回頭にけん引がかかり、AIISよりも腸骨寄りに力がかかります。
これによりどの部位を損傷しているかの判別材料になります。なので反回頭の検査では屈曲位で更に内転させると痛みが出ます。

下前腸骨棘炎という病名もあります。これは腸恥滑液包付近に炎症を起こす事があります。大腰筋腸骨筋とか主として影響しますが、それ以外にも大腿直筋の長頭が筋膜を介して繫がりがあります。直頭腱がずっとけん引されると、大腰筋も緊張してけん引刺激がかかり腸恥滑液包にけん引力がかかります。股関節周辺の腱は常に日頃から伸張性を高めてこれらの原因を起こさないようにしなければなりません。病気が進行すれば癒着瘢痕化します。

歩行で遊脚期よりも荷重期に痛みを感じるヒトの方の割合が多く、立脚初期立脚後期に痛みを感じます。立脚初期は、足を前に出すのに固くて伸びない短縮していますので股関節前面が挟まれる形になります。立脚中期から後期にかけて逆に伸張され、痛みが出やすくなります。図でも筋活動で赤く表示されています。

スエーバック

年齢が高くなってくるとスウェイバック姿勢をみかけます。脊柱管狭窄症などの方によくある姿勢で、腰椎の扁平化・骨盤後傾・お腹を前に出している姿勢です。これは立脚後期に痛みを出すのが特徴となります。理由は

股関節伸展が2度増加すると股関節前面にかかる力が体重の20%増加する

との報告があります。スウェイバック姿勢は股関節伸展位となった状態では、更に立脚後期後期で伸展方向に伸ばされると前面により負担がかかります。

股関節で痛みを拾う組織:前恥骨靭帯

前恥骨靭帯は恥骨結合の前面に付いている組織ですが、前恥骨靭帯に対して色々な組織が付着しています。左右の長内転筋、反対側左右の外腹斜筋、鼠経靭帯、錐体筋等があり前恥骨靭帯がこの周囲の軟部組織をつなぎ止めています。

この周囲の筋の遊びのキャパシティーがあるのが前提となっています。なので仮に左の長内転筋が緊張すると、右の外腹斜筋も引っ張られて緊張します。
更にそこには鼠径管があり外腹斜筋で挟まれています。

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