5.足の痛みの原因

下肢痛

脊柱管の血管

脊柱管狭窄症と間欠性跛行 〜静脈の圧迫が原因になることも〜
脊柱管狭窄症(LCS)では、「少し歩くと足がしびれて動かなくなるが、前かがみで休むとまた歩ける」という**間欠性跛行(かんけつせいはこう)**がよく見られます。

この症状の原因は、神経への圧迫だけではありません。
実は、**脊柱管内の“静脈”の圧迫による血流障害(うっ血・阻血)**も、間欠性跛行の大きな要因になるのです。

■ なぜ静脈が影響を受けやすいのか?
脊柱管の中には、脊髄の外側と内側に動脈と静脈が走っています。
このうち、静脈は血圧(脈圧)が非常に低く、10mmHgほどしかありません。

そのため、わずかな外圧(背骨の変形や靭帯の肥厚)でも、血流がすぐに止まりやすくなり、神経への酸素供給が不足=“阻血”状態になります。

■ 阻血と痛みの関係
この阻血によって、神経が一時的に酸欠状態に陥ることで、下肢のしびれや痛み(間欠性跛行)が発生します。

図にもあるように、

10mmHg程度の弱い圧で静脈の血流は止まる(Ando, 2007)

硬膜内静脈のうっ血は、神経細胞の微細損傷を引き起こす(H.V. Crock, 1987)

神経根の浮腫や脱髄が慢性的な痛みを生む(Rydevik et al., 1984)

といった報告があり、神経根の“血流障害”による間欠性跛行のメカニズムが科学的にも明らかにされています。

■ なぜ休むとまた歩けるのか?
前かがみになると背骨の角度が変わり、背面からの圧力が一時的に緩和されます。
その結果、圧迫されていた静脈の血流が再開し、神経への酸素供給が一時的に回復します。
だからこそ、少し休むとまた歩けるようになるのです。

🧠 ポイント
静脈は圧に弱く、軽い狭窄でも血流が止まる

神経の圧迫だけでなく、血流障害(阻血)も痛みやしびれの原因

歩く→血流障害→しびれ → 休む→血流回復 → 歩ける、の繰り返しが間欠性跛行の仕組み

 

鶴巻温泉治療院