神奈川の鶴巻温泉治療院は医師も推薦する気功治療院です。

症状別ページ

うつ病

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うつ病は脳の心身症

体の病気のほとんどは精神的なストレスと無関係では無く、精神的ストレスは消化器、循環器を始め全ての身体部分に機能的、器質的疾患を起こします。この様に心因的なものと非常に関係の深い疾患を心身症というくくり方をしますが、うつ病もいわば脳に起こった心身症といえます。うつ病は心の病気ではありますが、脳が長期的に受けたストレスの結果、中脳一辺縁系で神経伝達物質のカテコールアミン(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン等)やインドールアミン(セロトニン等)の刺激伝達機能が上手く行かなくなっている事は分かっています。また前頭葉の血流低下やグルコース代謝の低下も起こっている様ですが、回復すると正常化します。つまり、体質的に脳のアミンの代謝や機能に弱点のある人が、社会的環境、心理的ストレス、肉体的変化(思春期、更年期、老化)等の慢性的ストレスによって代謝が上手く行かなくなり、自律神経障害を含む身体症状や精神症状が起こると考えられるのです。また脳の部分では、例えば帯状回という部分が興奮すると不安感が起こり、扁桃体が過剰に抑制されてもうつの状態になります。脳は使っているとその部分の血流が増えシナプスが増えて強化されます。思考の傾向で不安や怒りの感情を持ち続けると辺縁系の帯状回や扁桃が刺激され続け、強化されてしまうのです。一方明るい思考や喜びの気分は側座核や前脳基底核の中隔核を刺激、強化します。つまり日頃の思考パターンや感情そのものが脳の回路パターンを作るのだともいえるわけです。うつ病が発症すれば心掛けや精神力では治りませんが、治った後負の回路を強化し続ける様な思考・感情生活をしていれば再発する事になります。精神療法や認知療法はうつ病の予防・再発予防にとってこそ必要だといえます。
 
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うつ病の見分け方

内科を受診する人の20人に1人、入院患者(精神科以外)の5人に1人がうつ病だとみられています。様々な身体的愁訴をかかえて治療院を訪れる患者さんの中にも当然うつ病の方がいると考えられ、そのことは治療を進めて行く上でも念頭に置いておく必要があります。多くの場合最初は精神的な愁訴よりも身体的な愁訴、疲労感、倦怠感の訴えが多く出ます。外見的にも活気が無かったり、動作が辛そうで緩慢、表情が暗い様であればうつ病の可能性があるとみられます。更に会話の中で睡眠の状態や食欲等を聞いて、不眠や食欲不振があればよりうつ病の疑いは濃くなります。抑うつ感だけでなく、これまで好きだった事までやる気が起こらないとか、何でも無くできていた日常の行動や仕事等を努力しなければできなくなった、先々を悲観的に考える等の症状があれば治療が必要な段階といえます。カウンセリング的対応や行動療法などの認知療法はうつ的傾向にある人や再発予防の為には有効ですが、既にうつ病を発症している様な場合は抗うつ剤と休養が治療の中心と考えるべきです。
 
 
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うつ病に頑張りなさいは禁句

うつ病では体重の減少や不眠、気力減退、思考力低下、性的関心の消失等様々な症状を伴いますが、一番注意する事は自殺です。うつ病は職場や家庭での対人関係、引っ越し、進学、昇進等生活の変化等が過剰ストレスとなって心身を蝕む事で引き起こされます。また真面目で几帳面、責任感が強い、仕事熱心な完全癖といった性格の人はストレスをまともに受けてうつ病になりやすいと言えます。うつ病は休養が必要ですが、この様な性格の人は、どうしてうつ病になったのか、早くこの状態から抜け出したいと焦り苦しんでいます。更に何事に対しても意欲がなく、無価値感や罪責感に悩まされ、「死にたい」とか、「自分は必要がない人間」と強く感じ、自殺をほのめかす自殺念慮が強くなります。この状態の人には不用意な対応をしないことが大切です。例えば突然、会社や学校を辞めたいといった決断をしてしまう場合がありますが、大きな決断は現時点ではしないようにアドバイスするべきです。また、励ましの言葉は更に苦しめます。「がんばりなさい。」「一日も早く良くなれ」「怠けているんじゃないか」等の言葉はタブーです。接する時は気持ちを推し図って、共感を持って対応する事が大切です。焦りの強い人には「早く治そうと焦らないでゆっくり治して行こう」と気持ちに余裕を与えたり、また思い悩んでいる人にはこの様な状態になって大変ですね」と共感してから、「うつ病は必ず治る病気ですから」と安心させる事です。自殺は衝動的に実行される事があるので、専門医に早く受診させる事が大切です。
 
 
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うつ病と不眠

うつ病と不眠病では必ずといってよい程不眠が起こります。落ち込み感など、他の兆候があっても熟睡感と朝の爽快感があればうつでは無いといえる程です。不眠には・入眠障害、・熟眠障害、・早朝覚醒、・多夢がありますが、うつ病ではどのパターンも多く、また混在してみられます。とはいっても、うつ病による不眠で最も特徴的なのは早朝覚醒です。夜中や早朝に目が覚めて眠れなくなるのですが、その時には抑うつ気分が強まり、自責の念等も起こりやすくなり、自殺の危険性が高まります。睡眠不足を昼寝で補おうとしても、うつ病では昼間でも眠り難くなっている様です。しかも、睡眠の質的な変化も起こっています。レム睡眠は大脳を活性化する眠り、ノンレム睡眠は脳を沈静化する眠りだといえ、実際、レム睡眠はノルアドレナリン、ノンレム睡眠にはセトロニンが関係しています。健康な人ではレム睡眠がゆっくり現れ(90分~120分かけて)、朝になるに連れて長くなるのに、うつ病の不眠では、眠りに入った後レム睡眠が早く現れ(40分前後で)、睡眠前半に長く、後半に短くなる事が分かっています。脳を沈静化してくれる眠りが不足し、いわば脳が過覚醒の状態に陥っているといえるのです。つまりうつ病での不眠のベースにはこうした神経伝達物質の機能異常が眠りにも影響を与えていると考えられます。
 
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うつ病の薬

日本ではうつ病の治療に「三環系抗うつ薬」「四環系抗うつ薬」「SSRI」「MAO阻害剤」等が使われています。三環系抗うつ薬は化学構造式の中に3つの環がある事からこの名が付いていて、古くからあるタイプの抗うつ薬で、今でもよく用いられます。特徴はほとんど全ての人に効果が期待できる点ですが、副作用が一番出やすいというデメリットもあります。口が渇く、便秘、排尿障害、目のかすみ、人によっては心臓や肝臓に障害を起こしたりします。四環系抗うつ薬は副作用を減らす目的で開発されたものですが、効果の点でも副作用の点でも三環系抗うつ薬より軽くなっています。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、プロザックが有名です。日本では'99年に認可されて(製品名:ルボックス、デプロメール)使用されました。三環系抗うつ薬が複数の神経伝達物質(アセチルコリン・ノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミン等)に作用するのに対し、SSRIはセロトニンだけに作用する為その他の物質に関連した副作用が起こらないのが利点で、心臓にも負担がかかりません。しかしこれは長所であると同時に短所でもあり、副作用が限られる分作用も限られるのです。一般に軽度のうつ病の人には有効ですが、三環系抗うつ薬でなければ効かない場合もあります。さて薬の効果が現れるのは服用開始からおよそ2週間たってからで、副作用の方が早く現れます。抗うつ薬は一定の血中濃度を保って初めて効果が現れる薬なので、副作用を嫌って飲む量を減らしたり中断しては何の効果も期待できません。またうつの症状が改善されてからも再発を防ぐ為に半年間は同じ量の薬を飲み続ける必要があるのです。
 
 
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うつ病の回復期間

うつ病の回復期間がどれくらいかは一概に言えません。DSM-Ⅳ(アメリカ精神医学会が発行している「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic and Statistica1 Manual of Menta1 Disorders)第4版)ではうつ病の診断基準は少なくとも2週間以上続くものと定義していますが、治癒するまでの期間は未定です。うつ病といっても、対象とするうつ病の病型の差、うつ病の定義を広義にみるか狭義に捉えるか等で違ってきます。個人的な生活環境や資質なども強い影響がありますので、なかなかハッキリした予測がだせません。精神医学研究の第一人者で、一般向けのうつ病の著書もある笠原審氏のデータでは、3ヶ月以内が約1/3、9ヶ月以内が2/3、1年以内では7/9が治癒したという報告があります。ただし1年以上や、まれに2~3年以上も続いた後に良くなったケースもあるそうです。アメリカの大学病院のデータでも、大うつ病ばかりの難治のケースで80%は2年以内に治癒したという報告があります。ほとんどのうつ病の場合は、期間の長短は別にして休養と抗うつ薬で治癒していますが、抗うつ薬に関しては患者さんばかりでなく周囲の人も“脳に働きかける薬"という事で、抵抗感があったり、すぐに効果が出るわけではないので途中で服薬をやめてしまうケースがかなりあります。また抗うつ薬には「ボケになる」「単なる気休め」「薬の依存症になる」「薬にいつまでも頼ってはいけない」等の俗説もあり、それが薬の服用を妨げてもいます。確かに抗うつ薬は副作用がありますが、うつ病の治療はかなり完成されていて、薬もその方法の下に処方されています。症状がなくなってからも半年以上服薬を継続した患者さんの方が、止めた患者さんより再発率がずっと低くなったという臨床報告も出ており、服薬は医師の指示に従う事が大切で、勝手な判断は時として悪化させる事になるので不審な場合も医師の説明を求める事です。
 
 
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うつ病の精神療法

うつ病の治療としては、抗うつ薬が主流ですが、投薬以外では精神療法がいくつかあります。中でもうつ病には「認知療法」が知られています。この認知療法は米国のアーロン・ベックが考えたやり方です。うつ病は感情障害であり、絶望感や悲哀感が心を満たしています。そこで、この様な心模様になってしまう考え方を変えれば、憂うつな気分や不安感は和らぐという考えに基づいた精神療法が考えだされたのです。つまりベックは状況より、それを主観的にどのように認知しているかが、感情に大きく影響を与えることに注目して、うつになった時の認知の片寄りを修正して、感情をコントロールしょうとしたのです。その中で、うつ病の患者は自己、世界、未来の3つの領域について、極端で独特の悲観的な考え方に支配されていて、これを「否定的認知の三特徴」と呼んでいます。その独特の歪んだ認知を構成しているいくつかの要素を挙げています。一つ失敗すると総べて駄目になるという考え「全か無か(二者択一)」。少しの困難を大災難のように考える「破局的な見方」。仕事等の一度の失敗が将来に渡って繰り返し起こると考える「過度の一般化」。何事も否定的な見方で、決して肯定的には見ない「心のフィルター(選択的抽出)」。良い出来事も悪い出来事にすり替える「マイナス化思考」。相手に対する勝手な思い込み「心の読み過ぎと先走った否定的な読み」。他人を大きく、自分を小さく見る「誇大視と過小視のトリック」。罪悪感や悪人感などの解決不可能な理由にこだわる「情緒的理由付」。否定的自己像をつくり洛印を押す「誤ったレッテル貼り」。関係の無い物も自分のせいにする「自己関連付」。うつ病患者はこれらの認知の歪んだ「スキーマ(物の見方の鋳型)」によって規定されていると考えたのです。これらの認知の歪みを指摘するのでのは無く、患者自身が気付いて、自分で答えを見つけられる様にしていくのです。ただし、自殺念慮の強い場合のうつ病と双極性のうつ病では、危険なので適応ではありません。
 
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体の疾患とうつ病

体の疾患を持っている人の10~20%はうつ症状を持っているといわれていますが、うつ状態と関係が深い身体疾患は表の通りです。特に脳疾患、内分泌疾患、糖尿病、消化器潰瘍、アルコール依存等は非常にうつ状態を起こしやすい疾患です。まず中枢神経の疾患のほとんどがうつ状態を起こす可能性があります。この場合抑うつ感や自責感よりも意欲が無くなったり億劫な気分が前面に出る事も少なくありません。パーキンソン病がうつ状態を伴いがちなのはよく知られています。脳卒中後もうつ状態になりやすく、リハビリの障害になったりします。糖尿病もうつと関係が深く、うつ状態の時耐糖能の低下が見られたり、重症のうつ病の患者さんの20%に尿糖が陽性であり、うつ病が回復すると正常に戻るといいます。ホルモンの異常でもうつ病を起こしやすく、甲状腺機能低下症(まれに亢進症)、クッシング症候群等で起こります。内分泌疾患によるうつ状態では抑うつというより不快な気分が多く、無気力や意欲の変化に特徴がある様です。この場合は勿論うつ病の薬は効かず、ホルモン療法が有効となります。この様な疾患があるとうつ症状があっても気が付きにくかったり、無視されがちですが、治療意欲が減退したり、食欲低下や睡眠障害を起こしやすいので原疾患の治療にも差し障りが出てしまいます。またうつ病の投薬を受ける場合はそれぞれの治療薬との相互作用に注意をしなければなりません。
 
うつ病をもたらすおもな病気
中枢精神疾患、心筋梗塞、糖尿病、消化性潰瘍、慢性呼吸不全、がん、全身性エリテマトーデス、関節リュウマチ、重篤な貧血、電解質異常、高血圧、慢性腎盂腎炎、内分泌疾患、潰瘍性大腸炎、薬物依存、アルコール依存、AIDS、ビタミンB欠乏
 
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運動でうつ病予防

軽いうつ病の場合でも、適度な運動が抑うつ的な症状を軽減するのに役立つ事が知られています。ストレスや嫌な事が起きると、情動の中心である扁桃や帯状回の神経回路が興奮して元気や精神安定に役立つセロトニンの分泌が抑えられ不安や抑うつ感が増幅されます。この状態が継続的に続くとうつ状態に入っていく事になるのですが、その状態を防ぐのに運動が有効なのです。運動する事は悩みと関係がない脳の神経回路を使う事になり、悩みで興奮している神経回路が抑制されると考えられているのです。運動で気分を向上すると扁桃や帯状回の興奮が抑制されセロトニンの分泌が促がされ、活力も高まり、睡眠や食欲の状態も改善する事ができるのです。米国のデューク大学の心理学者が軽度から中等度のうつ病を有する高齢者156名を、無作為に45分間の運動を週3回、抗うつ薬+運動、抗うつ薬のみの3つの治療法を行うグループにわけて、4ヶ月後に調べたところ、運動だけのグループでも、他のグループと同じ位の効果がある事が分かりました。更に6ヶ月の追跡調査をしたところ定期的に運動した人は他のグループに比べ再発率が低かったといいます。運動としてはウォーキングなど有酸素運動を行いますが、うつ病の危険年齢である中高年の人は1週間に3回、30分位のウォーキングをする事が、不安障害や軽症うつ病の予防効果になる様です。その運動も太陽の日差しを浴びながら行うと、更に効果が高まります。セロトニンは肉、魚、大豆と言った食品に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから作られています。このセロトニンは光が視床下部に刺激が加わる事で増加するのです。更に夜になると酵素が働いて睡眠に重要なメラトニンになります。太陽の下で運動する事が、脳を活性化させて元気が出るのです。
 
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アルコールとうつ病

お酒を飲むのも、気分転換で飲んだり、楽しいお酒を適量であれば良いのですが、二日酔いになるほど深酒をしたり、仕事の接待等ストレスが高い中で大量のアルコールを飲むと気分が憂うつになり、気分障害を起こす事があります。その時の脳を調べると心の安定や気分を良くするのに重要な役割をする神経伝達物質のセロトニンが少なくなっている事が分かっています。過度のアルコールはこのセロトニン代謝を抑制すると考えられているのです。アルコールを飲む事でうつ気分や悲哀感へと、気分障害が激しくなりやすい人は、飲む量を控える事が大切です。更にアルコールを多く飲むと、寝つきは良くても、深い眠りが得られ無かったり、朝早く目覚める等睡眠のリズムが乱れてきます。仕事の疲れを取る為や、睡眠薬変わりにアルコールに依存する様になると抑うつ感や不安といった気分障害であるうつ病の危険が増すのです。米国の精神科医シュキット博士が577人のアルコール依存症患者と面接調査をしたところ、重度のうつ病は30%、軽度を含めると70%にうつ病が認められ、そのほとんどは、アルコールが脳に作用してうつ病が引き起こされたというのです。抗うつ薬による薬物療法はあまり効果がなく、アルコールを断つ事で、速やかにうつ病が改善したというのです。またうつ病の合併症としてアルコール依存症には注意が必要です。憂うつ気分から逃れる為にアルコールで紛らわせようとして量が多くなって行くのですが、感情の起伏が激しくなり夫婦不和や児童虐待、暴力行為など破滅的な生活になり、うつ病からの改善を遅らせる原因にもなります。
 
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うつ病と消火器症状

一般にうつ病の身体症状の訴えとして、最も多いのが睡眠障害ですが、倦怠感・易疲労感、首・肩のコリ、頭痛・頭重態の順で訴えがあります。また臓器別系では、当然ながら自律神経失調が伴いますから、消化器系が最も多く、次ぎに循環器系、呼吸器系と続きます。この消化器系の症状として、ほとんどのうつ病患者が訴えるのが食欲不振です。また、体重減少、便通異常(主に便秘)、ガス症状、吐気、咽喉・食道の違和感、腹痛、胃部不快感等があります。これらの症状を引き起こす背景に倦怠態・易疲労感等の精神運動停止である決断力低下やとりかかり困難等があるのです。この様な状態の中で特に中高年の家庭の主婦の場合、食欲不振や消化器症状が常にある為に料理を作る事は拷問に等しい苦痛となります。ですから起きて朝食を作る事が困難になりますが、身体が動けるのに朝飯すらできないという風に、周囲は怠け病と思いがちです。この様なケースではなにより家族の理解が大切になるのです。これらの消化器症状は心身症でも同じ様にでますが、うつ病の場合は感情障害が必ずある事と、全身性である点が限局性の心身症とは違います。また、心身症でよく知られている胃・十二指腸潰瘍はうつ病でも合併する事が知られています。うつ状態になる前の前駆症状として出たり、うつが軽決すると潰瘍が悪くなるという事も興ります。また、様々な不定愁訴を起こす自律神経失調症の中にうつ病が紛れ込んでいる可能性がありますが、自律神経失調症即ちうつ病という関係ではありません。
 
 
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脳血管障害とうつ病

脳血管障害後に発症するうつ状態を脳卒中後うつ病(P S D : post-stroke depression)と呼んでおり、脳卒中後1年以内の20~50%に発症すると言われています。PSDはリハビリや社会復帰の妨げになりますし、患者さんのQOLの為にも早期の診断と適切な治療が必要です。ところが、日本では脳血管障害のうつ状態は、身体機能の障害による心理的なショックで起こる抑うつ状態であると考えられていました。しかし、既に1981年にはアメリカの研究者が脳内の神経細胞の直接的損傷によるうつ状態であると報告しています。特に、脳損傷が左半球の前頭に近い程うつ状態の頻度も重傷度も高い報告も出ています。ただ、脳の損傷の部位や程度により、まだら痴呆、知的機能の障害、無感情状態、失語等の症状がある為に脳卒中後のうつ病の鑑別は難しいのです。そこで日本ではPSDのうつ状態に、意欲改善、情緒障害改善や痴呆症薬でもある脳循環代謝改善薬が治療薬として使用されてきたのです。この脳循環代謝改善薬は田辺製薬が最初に子供の精神発達遅滞に伴う意欲低下等の治療薬として開発し1978年に厚生省の承認を受けて製品名「ホパテ」として売り出しました。その後1983年、脳血管障害の後遺症の改善薬としての効能が追加された事をきっかけに、痴呆症やうつ状態の患者さんへの使用量が激増していきました。ところが、98年にホパテの副作用で11人の患者が死亡したのをきっかけに、再試験の結果、改善薬としての効能を取り消したのでした。後発の同種の5種類のうち4種類の薬は「効果が認められない」、残りの1種類も「データに疑義あり」として、最終的には情緒障害の効能が取り消されたのです。つまり、ホパテに類する全ての薬はうつ病には効果が無かったわけです。これらの4種類の薬だけでも1990年代の後半から販売され、これまでの売上総額は約8000憶円にも上ります。日本では1998年まで、脳血管障害によるうつ病は放置されたに等しかったのです。
 
 
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老人のうつ病

中年頃までのうつ病が内因性のうつ病である事が多いのに対して、老人のうつ病では身体性や心因による傾向が強まります。風邪等、壮年であれば何でも無い軽い疾患が引き金になったり、脳卒中やパーキンソン病など脳の変性による事も多くなります。また老年期そのものが、配偶者や友人など人間関係を始め、仕事や社会的役割、経済力、更には自分の健康など、様々なものを喪失していく時期でもあって、そうした新しい状況が一層うつ病へと追いやります。老人のうつ病の症状では不安や焦燥感、神経症的傾向が強く、自殺率も高いのでより注意が必要です。症状としては身体化された症状がよく見られ、中でも便秘の訴えは非常に多く、身体症状への強いこだわりも起こります。身体症状の中身はめまいや頭痛等多彩ですが、共通的なのは睡眠と食欲に障害が起こっている事です。また妄想も起こりやすく、貧困妄想や罪業妄想、被害妄想等で自分はいない方が良いとか、迷惑をかけている等と信じ込む事もあります。また身体活動も思考も低下して、-見痴呆の様なうつ病性の偽痴呆が起こる事もあります。痴呆の症状が急激に起こった時はまずうつ病が考えられますがうつ病による偽痴呆では抗うつ剤によって可逆的に回復する事ができます。ただ、高齢では薬の副作用も出やすく、他の疾患の治療薬との相乗作用も起こりやすいので細心の注意が必要となります。
 
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女性特有のうつ病

女性のうつ病患者数は男性の2倍となっています。思春期に入るまでのうつ病の発症率は男女同等で、11~13歳の間に少女のうつ病率がぐっと上昇し、15歳になると大うつ病の発症率が男性の倍に達します。生殖可能な年齢でのうつ病の発生が男性よりも多い事からも、情緒や精神的問題と女性ホルモン産生が深く関連している事が分かります。また結婚や出産がきっかけでうつ病になる事がよくあります。出産後2、3日で新しく母親となった女性の半数が、理由も無く泣いたり赤ん坊に否定的な考えを持つ「ベビーブルー」という症状がありますが、この様な感情は正常であって1週間位で治まります。しかし「産後うつ病」は出産後4週間位までに現れるもので、大うつ病と症状が重なるものが多くやや重症です。女性ホルモンのバランスが劇的に変化する事によって、気分を調節している脳の活動に影響し、ストレスに対する抵抗力が弱くなるのです。更に出産はホルモンの変動という生物学的な事だけで無く、身体的・精神的にもストレスが増える時期であり、これらが重なってうつ病が起きやすいと考えられます。また更年期もうつ病が発症しやすい時期です。この時期も女性ホルモン分泌の変化によって身体的・精神的な不調が現れやすくなります。また家庭内でも、子供の進学や就職・夫婦関係の問題・親の病気や介護・老後への不安等、様々なストレスが更年期の女性にのしかかる事が多く、うつ病が発症しやすいのです。
 
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うつ病気質

うつ病になりやすい性格とは、几帳面、仕事熱心、堅実、律儀、責任感が強い、秩序志向等だといわれます。これは執着気質といわれる性格ですが、ドイツのテレンバッハという精神病理学者はこうした性格に加えて、対人関係においても秩序志向や几帳面さが強く、他人に対して誠実で気を使い、衝突を避けるといった性格をメランコリー親和型としました。うつ病になりやすい型の一つとして取り上げたものです。しかし、このメランコリー親和型のタイプというのは多くの日本人にとっては望ましい、模範的とされている性格です。つまり日本の文化、社会構造、メンタリティーそのものがメランコリー親和型うつ病の病前性格を理想としているとも言えるわけです。しかも管理が強化された社会ではメランコリー親和型の人にとっては過剰適応から適応破綻につながりやすいのです。このメランコリー親和型うつ病では重症化すると自殺念慮も強くなりがちですが、抗うつ薬に反応しやすく、治療しやすいうつ病といえるようです。一方、時代の流れで社会的規範が多様化する中、最近ではメランコリー親和型とは違う傾向のうつ病が注目されてきています。過保護で葛藤のない養育過程や母子分離がなされないままに成長する等の自立不足による未熟的な逃避型抑うつの増加です。自分に対する関心が大きく、病気に対する過度な気遣いをしたり、対人関係において過敏に反応しがちで、仕事にムラがあったりする事が特徴とみられています。現実逃避的になり急に自殺を図ったりして周囲の人を困惑させたりします。性格や環境の影響が大きく、依存や甘えが強い傾向があります。長引く事が多くて抗うつ薬に反応しにくく、うつ病というより神経症に近いとみられています。いずれにしても感情に関する障害は文化や社会状況と関係が深く、日本の文化的な特性という面から考える事も必要といえるでしょう。
 
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抗うつ薬とチラミン

興奮性の神経伝達物質のうち、ノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミンは、アミノ基を1個だけ持っている「モノアミン」という構造をしています。これらを酸化分解する「モノアミン酸化酵素(MAO)」が盛んに働くと、体内のモノアミン濃度が異常に低くなり、神経伝達物質が不足してうつ病発生率が増加することが確認されています。さてモノアミン酸化酵素はヒトの腸壁や肝臓にあって、チーズやワイン等に含まれるチラミンや、マグロやブリ等の魚類に多く含まれヒスタミンに変化するヒスチジンなどの成分を代謝しています。ところが抗うつ薬のMAO阻害剤を服用している場合、チラミンとヒスタミンが分解されなくなって体内に蓄積され、交感神経に過剰に働きかけて、顔面紅潮・腹痛・頭痛・血圧の変動等を引き起こします。チラミン中毒とヒスタミン中毒は症状が似ていますが決定的に違うのは血圧の点で、チラミン中毒は血圧が上昇するのに対し、ヒスタミン中毒では低下します。特にチラミン中毒では血圧が激しく上がる事があり、脳出血やクモ膜下出血を引き起こしたりします。MAO阻害剤を使用中の人はチラミンを含むチーズ・ワイン・ビール・そら豆・にしん・レバー等を摂らない事となったのです。現在の日本では副作用の強いMAO阻害剤はあまり使われませんが、中毒を起こさない選択性の高い新しいMAO阻害剤を開発中です。また他の薬でも、三環系抗うつ薬や抗不安薬をアルコールと一緒に摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上がる事が分かっています。中枢が強く抑制される為に運動障害・呼吸抑制にまで至ると危険です。



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  • 責任者溝口 潔
  • 営業時間9:00~19:00 / 年中無休
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